ウェイトトレーニングで付けた筋肉は使えないという誤解

ウェイトトレーニングで付けた筋肉は使えないという誤解

日本ではまだまだ習慣として体を鍛えている人は少なく、ジムに通っている人は少数派です。運動習慣についての厚生労働省の平成28年調査データによると、運動習慣のある成人は全体で3割程度にとどまっています。さらにこの数字は健康を意識して運動している高齢者によって引き上げられたもので、若い人ではさらに低い割合となっています。

しかもこの運動習慣というのはあらゆる運動、例えばランニングやジム通い、スポーツなどをすべて合わせたものなので、今回フォーカスする運動であるウェイトトレーニングの経験者についてはさらに少ないことになります。

このようにウェイトトレーニングが一般に浸透しておらず、経験者も少ないためか日本ではウェイトトレーニングについてある誤解をしている人が一定数います。そのある誤解とは

「ウェイトトレーニングで付けた筋肉は使えない筋肉である」

というものです。しかし端的に言ってこの主張は誤りです。ほとんどのスポーツにおいてウェイトトレーニングは能力の向上に大きく寄与するものであり、現代では必須のトレーニングの1つです。実際に野球、サッカー、バスケットボール…etc. ほとんどのスポーツにおいてプロスポーツ選手たちはワークアウトとしてウェイトトレーニングを取り入れています。

さらにスポーツ選手ではなくても、筋肉量の向上による健康の保持増進、日常生活における動作の改善、怪我の予防、老後の寝たきり予防など、メリットは数多くあります。つまりスポーツ選手にも一般人にもウェイトトレーニングは有益であると言えます。

それではなぜ、このような誤解が広まってしまっているのでしょうか。今回はこの誤解を解いていこうと思います。

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使える筋肉、使えない筋肉って何?

まず「ウェイトトレーニングで付けた筋肉は使えない」と主張する人の言うところの使える筋肉というのがどういうものなのか考えてみます。

そもそもウェイトトレーニングをする目的はスポーツ能力の向上やボディメイク、健康の保持増進など人それぞれで、普通に考えれば使える、使えないのといった議論が入り込む余地はないように思います。つまりこの手の主張をする人は自分の中で筋肉について固定観念があり、それに基づいて使える・使えないという判断を下していると考えられます。

そしておそらくは、自分が想定するスポーツにおいて使えないという意味で言っているのだと思います。このとき脳裏にあるのはおそらく筋肉ムキムキのボディビルダーや、オフシーズンに筋肥大させた結果パフォーマンスを落としてしまったプロスポーツ選手などでしょう。

それではウェイトトレーニングの効果と問題点から、なぜこのような誤解が生じたのかを考えてみましょう。

 

ウェイトトレーニングの効果

まず前提として、ウェイトトレーニングによって強化できる要素は大きく分けて3つあります。

  • 筋肥大
  • 筋力の向上
  • 瞬発力(パワー)の向上

それぞれ1つずつ見ていきましょう。

筋肥大

まず筋肥大についてです。ボディビルダーやボディメイクが目的の人がは、筋肥大させることを狙ってウェイトトレーニングをしています。筋肉が発揮できる最大出力は筋肉の断面積に比例するため、球技などのスポーツを目的としている人にとっても筋肥大させて最大出力を向上させたり、当たり負けしない体を作ることは重要なトレーニングとなります。

筋力

次に筋力の強化についてです。筋肥大にフォーカスしたトレーニングによって筋肉量を増加させたからといって、その筋肉の最大出力をすぐに発揮することができるとは限りません。なぜなら筋肥大を狙ったトレーニングと筋力を向上させるトレーニングは別であり、神経系を十分に発達させるまでは筋肉の持つポテンシャルを最大限発揮させることができないからです。筋力を向上させることによって、同じ筋肉量であってもより強い力を引き出すことができます。筋力が強いことがマイナスに作用することはまずないと思うので、すべての人にとって筋力を向上させるトレーニングは有効です。

瞬発力(パワー)

最後に瞬発力(パワー)の強化です。瞬発力とはより速く、より強い力を発揮するための能力です。具体的にはダッシュやジャンプ、素早い方向転換などが瞬発力が重要になる動きです。筋力が高くても瞬発力が低ければ鈍重な動きしかできず、ダッシュやジャンプを繰り返すようなスポーツにおいては致命的な弱点となります。瞬発力を強化するのにも筋肥大や筋力強化とはことなるトレーニングが必要になります。ほとんどのスポーツにおいて瞬発力は重要な能力で、スポーツ選手は意識して鍛える必要があります。

 

ウェイトトレーニングの注意点

ウェイトトレーニングで強化できる要素について書いてきましたが、筋肉がスポーツにおいて完全にプラスの要素しかないのであれば、スポーツ選手はもれなく筋肉ダルマのような体型になっているはずです。そうなっていないのは筋肉量を増やすときに考慮すべきマイナス要素、注意点があるからです。

体重が増える

当然ですが筋肉量を増やすというのは体重を増やすことと同義です。体重が増加すると、体を動かすのにより多くの酸素やエネルギーを消費するので、持久力が低下する恐れがあります。また、体重増加に瞬発力強化が追いついていない場合は動きが遅くなります。さらに体重の増加は関節や筋肉そのものへの負担も大きくするので、競技にもよりますが怪我のリスクも高まります。

専門知識を持ち指導ができるトレーナーが必要

筋肥大・筋力強化・瞬発力強化とそれぞれ最適なトレーニング強度、インターバル、休息期間があります。さらにこれらの能力をスポーツのスキル習得へと繋げることを考えた場合、トレーニングについての十分な専門知識が不可欠です。誤ったフォームや強度のトレーニングは効果が薄いばかりか、怪我のリスクを高めます。プロスポーツ選手であれば海外の先進的なスポーツ理論を学んだトレーナーなんかがつくのでしょうが、一般の人にそのようなレベルのトレーナーやコーチを見つけることはなかなか難しいでしょう。ネット上の情報も玉石混交でどの情報を信じてよいか難しいでしょうが、独学で少しずつ知識を増やしていくのが現実的かなと思います。

 

「使えない筋肉」という誤解の原因

それでは前置きが長くなりましたが、上で挙げたウェイトトレーニングの効果と注意点の内容から考えられる、誤解の原因についてケースごとに見てみましょう。

ケース1

ボディビルダーは筋肥大に特化してトレーニングを行っているので、瞬発力が要求されるような動作では良い結果が残せない可能性が高い。ボディビルダーの瞬発系の動作レベルが低いの何かしらの機会に見たことで、ボディビルダーの筋肉は使えない、つまりウェイトトレーニングで付けた筋肉は使えないのだ。と結論付けてしまい誤解が発生した。

このケースではウェイトトレーニングの鍛えられる能力にはいくつかの種類があり、ボディビルダーはそのうち筋肥大に特化したトレーニングを積んでいるという前提条件を知らなかったために起きた誤解です。ウェイトトレーニングが悪いのではなく、瞬発系の能力が必要な種目をボディビルダーにさせるのがそもそもの間違いです。ベンチプレスやスクワットなどをさせれば、彼らはその筋肉量に恥じぬ記録を見せてくれるでしょう。

 

ケース2

オフシーズンにウェイトトレーニングを積んで筋肥大させ、体を大きくしたスポーツ選手が次のシーズンで良い結果を残せなかった。筋肥大した結果パフォーマンスの低下につながったのだから、ウェイトトレーニングが悪い。と誤解した。

このようなケースでも筋肥大したからパフォーマンスが下がったのだと決めつけるのは早計です。筋肥大に関しては見た目で分かりますが、筋肥大で増えた体重に見合うだけの筋力、瞬発力を獲得できていたかどうかは外見では分からないからです。筋力を強化するための神経系のトレーニングや、瞬発力強化のためのプライオメトリクストレーニングが不十分だった可能性もあります。目に見えて動きが鈍っていたのであれば、これらのトレーニングを積むことで改善する可能性は高いと言えます。

またそのほかに考えられる理由として、身体能力は間違いなく向上したが自分の能力の変化に感覚がついていかず、調整しきることができなかったという理由も考えられます。

スポーツは多くの要素が複雑に絡み合っており不調の原因を特定することが難しいため、分かりやすい見た目の変化(筋肉)のせいにしてしまいがちですが、知識つけて見てみればまた違う原因が見えてくるかもしれません。

 

まとめ

ウェイトトレーニングと筋肉について語る配分が多くなってしまいましたね。ウェイトトレーニングはいいものだよというのを言いたかったのでこんな記事を書いてみました。

ウェイトトレーニングが悪だと誤解して変に自重トレーニングなどにこだわっていると、筋肉量・筋力・瞬発力といった能力が早い段階で頭打ちになってしまいます。自身のポテンシャルを最大限引き出すためにも積極的にウェイトトレーニングを取り入れてほしいと思います。

筋肉量を増やすトレーニングと食事に関してはボディビルやフィジークの選手が多分1番詳しいでしょう。そういった方の本やブログ、動画などを参考にしてそこから始めるのが最も良い方法だと思います。ちなみに僕のおすすめはYouTubeで動画を投稿しているSho Fitnessというチャンネルです。Shoさんは以前はフィジークの選手でしたが、最近ではパワーリフターの選手としても試合に出ています。トレーニング理論、筋肥大、筋力向上、栄養学、サプリメントなどの知識をいっぺんに学べるので非常に勉強になります。

今回はこのくらいにしておきます。それではまた。

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