前この「効率よく筋肉を付けるためになぜ太る必要があるのか|増量期と減量」という記事で、効率のいい筋肉の付け方として増量期と減量期を設ける方法について書きました。この方法では増量期に体脂肪がある程度つくことを許容しなければなりません。
スタイルの維持や、スポーツのパフォーマンスを落としたくないなどの理由で、一時的とはいえ体脂肪がつくことを許容できない人もいるかと思います。そこで今回は体脂肪を極力つけずに筋肉量を増やす手法である”リーンバルク”について説明していきます。
リーンバルクとは?
リーンというのは痩せた様や脂肪がないことを示す形容詞で、バルクとは筋肉の大きさを表す言葉です。つまりリーンバルクというのは、体脂肪を極力つけずに筋肉を大きくすることを指して使う言葉ですね。基本的に体脂肪を全くつけずに筋肉を大きくするのは難しいので多少の脂肪がつくことは仕方のないことなのですが、それを極限まで抑えようというのがリーンバルクの考え方です。
似たような響きの言葉に”リーンゲインズ”というのがあるそうですが、リーンゲインズが減量を目的としている一方でリーンバルクは筋肉を増やすことを目的としています。名前は似ていますが方向性は反対ですね。
リーンバルクのやり方
基準カロリーを定める
リーンバルクではまず自分の現在の体重を維持するために必要となるカロリーを知る必要があります。この基準となるカロリーに筋肉を付けるために必要なカロリーを上乗せしたのが、リーンバルクにおける摂取カロリーの目安です。
それでは体重を維持するために必要となるカロリーをどう求めるかですが、計算方法として自身の除脂肪体重[kg]に40を掛けるという方法があります。例えば体重60kgで体脂肪率が15%ならば、除脂肪体重が51kgなので
51[kg]×40[kcal/kg] = 2040[kcal]
となります。基準カロリーは個人の体質によるところも大きいのでこれより高い人も低い人もいると思いますが、おおよその目安としてはこのくらいです。この基準カロリーに筋トレで消費されるカロリーと筋肉を合成するのに必要なカロリーを足し合わせていきます。
筋トレの消費カロリー計算
運動の消費カロリーを計算する方法として、各運動の運動強度を表すMETs(メッツ)という指標があるので、これを使って計算していきます。
METs : 各運動が安静時の何倍のカロリーを消費させるかを表す指標。安静時は1
ウエイトトレーニングのメッツは8なので、45分でトレーニングを終えると仮定するとメッツを用いた消費カロリーの式を使って
60[kg]×0.75[時間]×(8-1)[METs]×1.05 = 330.75[kcal]
1回のトレーニングでおよそ330kcalを消費したことになります。ウエイトトレーニングは強度が高く毎日するのは難しいので、週に3回行うとすると
330.75[kcal/回]×3[回/週]÷7[日] = 141.75[kcal/日]
よって一日当たりの平均消費カロリーは141.75kcalだとわかりました。これが筋トレで消費するカロリーです。
筋肉の合成に必要なカロリー計算
体内のアミノ酸を合成してタンパク質を作り出すことで筋肉は大きくなっていきます。この合成にもエネルギーが必要であり、筋肉1kgを合成するのに5000kcalのエネルギーが必要になると言われています。これとあわせて筋肉量を増やすペースから必要なカロリーを計算します。
本格的なトレーニングを積んだことのない筋トレ1年目の人は、最高の食事、最高の栄養管理によって筋肉量を1年で10kg増やすことができると言われています。この数字はあくまでも最大値なので、半分の5kgを1年間で増量することを目標にします。
筋肉5kgを合成するのに必要なエネルギーは25000kcalですから、一日当たりに必要なエネルギーは
25000[kcal/年]÷365[日/年] ≒ 68.5[kcal/日]
となって、筋肉合成に必要な一日あたりのカロリー は約68.5kcalであることが分かりました。
必要な総カロリー量
基準カロリーにトレーニングによる消費カロリーと筋肉の合成によって使われるカロリーを足し合わせます。
上で挙げた例の場合で考えると、身長170cmで体重60kg、体脂肪率15%の人が週3でトレーニングをしながらリーンバルクをする際に必要な1日の摂取カロリーは
2040+142.75+68.5 ≒ 2250[kcal]
となることが分かりました。後は体重の変化を見ながら、予定よりも体重が増えない場合はカロリーを少し増やしたり、脂肪がつくようならカロリーを減らすなどして調整していきます。
栄養素のバランスについて
上記の方法でリーンバルクに必要なカロリーを計算することができましたが、次はこのカロリーをどのような栄養素から摂るのかを考えなくてはなりません。1日5個メロンパンを食べて2000kcal達成!なんてことをしても当然筋肉は付きませんし、僕は実際やったことがありますが体調を崩します。
PFCバランスの調節
タンパク質・脂質・炭水化物の摂取するバランスのことをPFCバランスといい、このPFCバランスを調節しながらトレーニングに最適な食事を考えます。
まず筋トレにおいてまず最も重要な栄養素であるタンパク質は、トレーニングをしている人の場合1日に除脂肪体重1kg当たり2~3gのタンパク質を摂るのが望ましいと言われています。今回は除脂肪体重1kg当たりタンパク質2gで設定します。
次に脂質です。脂質は体脂肪のもとになりそうなので完全にカットしてしまいたいと思うかもしれませんが、脂質はホルモンの生産やビタミンの吸収にも利用されているので完全にカットすると危険です。なのでこちらは除脂肪体重1kgあたり1g程度に抑えます。
そして残ったカロリーを炭水化物から摂取すれば、リーンバルクに必要な栄養素とカロリーが補給できます。170cm、60kg、体脂肪15%の人の場合、除脂肪体重が51kgなので必要なタンパク質・脂質・炭水化物の摂取量とカロリーは以下の表のようになります。
摂取量[g] | カロリー[kcal] | |
タンパク質 | 108 | 432 |
脂質 | 54 | 486 |
炭水化物 | 333 | 1332 |
ちなみにタンパク質と炭水化物は1gあたり4kcal、脂質は1gあたり9kcalのエネルギーとなります。
PFCバランスから食事を考える
次は計算したPFCバランスから、それを満たすために必要な食事を考えます。主食が米で、プロテインを一日1杯飲むという前提で考えると、
タンパク質[g] | 脂質[g] | 炭水化物[g] | カロリー[kcal] | |
米:2.5合 | 23 | 3 | 291 | 1286 |
鶏むね肉:200g | 46 | 8 | 0 | 258 |
納豆:1パック | 7 | 4 | 5 | 82 |
卵:2個 | 13 | 11 | 0 | 150 |
プロテイン:30g | 25 | 1 | 1 | 109 |
鯖缶:190g | 27 | 23 | 0 | 318 |
合計 | 140 | 51 | 297 | 2202 |
一例としてはこんな感じでしょうか。これでリーンバルクに必要な一日の栄養素を摂取できるはずです。タンパク質が少し多くなっていますが、米のアミノ酸スコアはそう高くないので、そのあたりを考慮するとちょうど良いと思います。
鯖缶はこの中では脂質が多めですが、良質な脂質が摂れるので入れてみました。このあたりは好みに合わせて調節してください。野菜などは適宜摂取して、足りないビタミン等はサプリメントで補うと良いでしょう。
まとめ
リーンバルクをするために必要なカロリー計算と、栄養素の計算方法についてでした。非常にややこしい計算が必要になるので、かなり気合を入れて食事管理をしないとリーンバルクは難しいですね。とはいえ減量期をほとんど設けなくて済むなどのメリットもあるので、減量が苦手な人などにはいい増量方法かもしれません。
自分の体調と相談しながら、無理なく肉体改造していきましょう。
今回は以上です。それでは。