電気電子工学科って何が学べるの?現役大学院生が答えます

電気電子工学科って何が学べるの?現役大学院生が答えます

皆さんは電気電子工学科がどんなことを学ぶ学科なのかご存知ですか?

多分知らない人の方が多いと思います。漠然と電気といわれても対象が広すぎますし、そもそも興味もないという人がほとんどでしょう。

しかし電気に興味がないとしても、将来を考えたとき電気電子工学科は非常に優れた進学先になると思います。というわけで、進路に悩む受験生へ向けて電気電子工学科をおすすめするためにこの記事を書きました。

電気電子工学科がどんなことを学ぶのか、カリキュラムはどうなっているのかについて紹介していきたいと思います。

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電気電子工学科で学べること

エネルギーとして電気を扱う電気工学(強電)

電気エネルギーは他の様々なエネルギーへと変換しやすく、遠く離れた場所へも伝送が可能なため、人々の生活と産業を支える根幹として利用されています。将来どのようなエネルギー源が発見されても、電気を使う生活はまだまだ続くでしょう。それほど電気エネルギーは使い勝手がいいのです。

電気電子工学科では効率のいい発電、損失の少ない送配電、事故に強い送電網、発電機やモーターの仕組みなどを学ぶことができます。これらの知識は社会的需要が高く、電力会社や鉄道会社などのインフラ系への就職に有利にはたらきます。

現代はIT社会であり、必然ソフト系・情報系の方が学生に人気がありますが、就職に関してはパワエレを扱っている研究室の方が安定しているイメージがあります。(僕の大学では)

あと高専から大学に来た編入生はパワエレが好きな人が多いですね。

 

情報伝送などに電気を利用する電子工学(弱電)

電子工学(エレクトロニクス)は電子の振る舞いに注目して、情報伝送などに利用する学問です。現在では産業用の機械から一般人の持つデバイスまであらゆるものが電子制御されているので、製造業であればどの会社も電子工学のスペシャリストを必要としています。

電気電子工学科では情報を効率よくかつ誤りなく伝送する通信工学、取得した信号を目的に合わせて扱いやすいように数理処理する信号処理などを学びます。私の大学では通信系が特に盛んに研究されています。

日本の産業においてはデバイス系は苦戦している感じがちょっとありますが、通信系や信号処理はまだまだ大丈夫だと思います。

 

情報系っぽいプログラミングなど

プログラミングを学ぶことができるのは情報系の学科だけだと思っていませんか?

電気電子工学科でもプログラミングを学ぶことができます。電気電子工学科のプログラミングは数値計算や統計、制御系に使うのが主な用途です。あとは流行りの強化学習なんかも電気電子工学科で扱っています。

シミュレーションをよく使う研究室や信号処理系の研究室に配属されると、研究室でがっつりプログラミングを学ばされることになります。使用する言語は研究室によってC、Python、Fortranなど様々です。

ちなみに僕は研究室でFortranという言語を使っています。めっちゃ古い言語なんですが、今も開発の現場では使っているところもあるそうです。

 

電気電子工学科の授業について(学年別)

学部1年生:基礎科目、基礎実験

電気を理解し、扱うには数学の知識が欠かせません。なので大学1年生の間は主に数学系の基礎科目を学ぶことになります。主な必修科目としては微分積分学、微分方程式、ベクトル解析、線形代数学などです。高校の数学の延長線上ですね。めちゃくちゃ地味な上に普通に難しいので単位を落とす人もちらほらいます。

これに加えて実験機器の扱いや、実験の心得を学ぶための工学実験とそのレポートの書き方を学んでいきます。将来的に研究に携わるにあたって、実験とレポートの書き方を学ぶのは非常に有意義だといえます。しかしその分先生方も本気でレポートを採点しに来るので、レポートの再提出、再々提出は当たり前という恐ろしい科目です。

しかしまあ、大学生は最初の一年は比較的まじめなのでここで単位を落とす人は少ない印象。

 

学部2年生:基礎専門科目、電気電子工学実験

2年生から専門性のある電気系の科目も増えてきます。電磁気学や電子回路基礎、電子デバイスといった基礎専門科目を学んでいきます。といってもまだ基礎科目は残っていてフーリエ変換や回路網理論といった科目もこなしていきます。

みんな大好きプログラミングも2年生あたりで学ぶことになります。私はプログラミングの講義はC言語で行いました。基礎的なプログラムの描き方のほか、プログラムを実行したときメモリ内部で何が起こっているのかについてガッツリ学ばされました。得意な人と苦手な人の差が顕著に出る科目です。ゲームとか作りたい! って人が学ぶようなプログラムではないのでそこは一応注意してください。

そして毎年実験からは逃れられません。より電気系の専門的な実験を行い、それについてレポートを書きます。少し前に誰かさんが論文のコピー&ペーストが発覚して問題になった事件の影響で、私の大学では手書きでレポートを提出することが求められたので非常にきつかったです。コピペはやめましょう。

また2年目からは学生が大学に悪い意味で慣れてきて、サボりが増え始めます。進学や就職を意識するにはまだ早く、落とした単位も来年取り返せるという余裕から、単位を一番落としやすい時期になっています。

 

学部3年生:専門科目、電気電子工学実験

3年生からはもう専門科目の履修がほとんどです。様々な形態の電気について学んでいきます。

エネルギーとしての電気とは主に発電所、変電所、送電線などに関わるところで主に使われる知識です。具体的な科目としては電力工学、エネルギーネットワーク工学、電気機器、高電圧工学などです。

電子工学系の講義としては電波を送受信するアンテナについて学ぶ電磁波工学や、情報を効率よくかつ誤りなく伝送する通信工学、取得した信号を目的に合わせて扱いやすいよう処理する信号処理などを学びます。

大体この辺で自分の興味のある分野が見つかってくるので、大半の人は研究室も自分の興味のある分野を扱っているところを目指します。

あとこれは就活を終えたから分かることですが、研究室で学んだ内容と就職先の業界を一致させる必要はありません。特に大企業は学生時代の研究内容には拘泥せず採用を行っているイメージがあります。

 

学部4年生:卒業研究

ついに研究室に配属されます。僕の大学では成績順で配属先の希望が通りました。多くの大学は同じく成績順だと思うので、3年生までにどれだけ勉強をまじめにやっていたかが勝負になります。

4年生でやることは、3年生までに落とした単位の回収と卒業研究くらいです。4年生はほとんど講義がなく、研究室に通う生活になるので配属された研究室によって生活はさまざまです。

ちなみに私は4年生が一番楽な年になりました(笑)

しかしブラック研究室に配属された友人は常に死にそうな顔をしていたので、やはり研究室選びは大切です。特に電気電子工学科は8割以上が院進学する(国公立の場合)ので、ほとんどの人が計3年間を研究室で過ごすことになると思います。

ブラック研究室で3年間地獄を見ないためにも、学部時代の勉強は頑張った方が良いでしょう。

まとめ

電気電子工学科で学べる内容と各学年のざっくりとしたカリキュラムについてまとめてみました。電気電子工学がいかに裾野の広い学問かが分かってもらえたかなと思います。学ぶことが多すぎるせいで、学部時代では全く専門的な能力を身に付けるまで至らないんですよね。これが電気電子工学科の大学院進学率が高い理由のひとつになっています。

難しそうなことを長々と書いてしまいましたが、ざっくりいうと電気を使うことは何でもやるってことです。だから就職も電気を使っているところにはどこでも行けるわけです。高校生の時点でなりたい職業が決まっていないのなら電気電子工学科をおすすめします。就職最強学科と呼ばれる伊達ではないですよ。

【大学院】就職活動を終えての感想【電気電子専攻】

さらに電気電子工学科はぶっちゃけ不人気なので入試の倍率が低めで、上位の大学を目指しやすいというメリット?もあります。県外進学などで学費が不安だという場合は積極的に奨学金を借りていいと思います。就職とその後の給料が割と高めで安定しているので。「奨学金を過度に恐れる必要はないよっていうお話」という記事では僕の奨学金に対する見解を書いています。

就職に強いと言っても電気電子工学科から行けるのはメーカーくらいだし、給料も大したことないのでは?と思う人もいるでしょう。しかし実際は大卒・大学院卒なら実際は平均1000万円くらい稼げることも珍しくありません。このことは以下の記事で書いたので、興味がある方はどうぞ。

平均年収に騙されるな!メーカー(製造業)の平均年収が低いワケ

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さらにさらに電気系が肌に合わなかったら文系就職もできます。電気電子工学科からの文系就職については「工学部は文系就職できるのか?」という記事で詳しく書きました。

工学部は文系就職できるのか?

今回はこれくらいにしときます。それでは~。

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